昭和51年
毎日新聞社
函入 金箔押し布張り上製本
カラー口絵写真・本文図版モノクロ
※絶版
※月報付(別刷り小冊子)
刊行当時の、日本の重要文化財をすべて収録、国宝もあわせて収載した全集シリーズの一冊。
本書はそのうちの工芸品Ⅰ「金工」。
密教法具・舎利容器・懸仏・古鏡・仏具・鐘・磬・鏡像・錫杖ほか、茶湯釜・燈籠まで
仏教、密教、神仏習合、修験道、茶道などにまつわる金属工芸品をすべて分類整理して収録。
収録点数521点。一括登録の重要文化財については、1点のうち各品目の写真もあるため写真図版は1000図を超えます。
(たとえば、神仏習合の高賀信仰で知られる、那比新宮神社・那比新宮信仰資料のうち、懸仏だけでも200点以上あります)
各図版の説明は、略名称、員数、所在都道府県、所蔵者(個人、神社、寺院、博物館等)、材質、技法、文様、法量、時代を基本として、製作年には西暦を付記。
日本各地の寺院、神社、博物館から研究機関、企業所蔵品、個人蔵品までを網羅し、単色写真で紹介したもの。
小さいながら非常に数多くのモノクロ写真図版で構成され、一覧性に富んだ本書は調べ物の手がかりとしても優れており、書籍であればページをめくるだけで情報を行き来して便利に見比べることができます。
重要文化財・国宝として、博物館や美術館の収蔵品は展示されますが、資料館、寺社や大学所蔵、企業所蔵、個人コレクター所蔵のものなどは特にお目にかかる機会もめったにありません。
本書は学術調査のみ公開、数十年に一度の御開帳の際にしか公開されることのない秘仏も含む、仏教美術、密教美術、彫刻、仏像、修験道、垂迹美術、骨董、古美術品、歴史等愛好家必携・大変貴重な資料本です。
画像のものが全てです。
【刊行のことば より】当シリーズ全体の序文
先人の文化遺産を鑑賞することは後世の欣喜すべき権利であり、これを将来に伝えるのは崇高な義務である。
近時世界の文明国は、いずれも自国の文化財保護に力を尽くしている。そのなかで、日本は近代文明と伝統が見事に融合しているといわれているが、まだ文化財の価値の認識が、十分に行き渡っているとはいえないであろう。
だが、文化財保護法は、重要文化財を知ることがわが国の歴史文化の正しい理解に不可欠で、かつ将来の文化向上の基礎だとのべている。
毎日新聞社はこの目標にそい、文化財への認識を深めるため、さきに「国宝」を刊行したが、ついで国指定の重要文化財(国宝を含む)の全容を集大成し、永遠に残したいと念願し、この図録を企画した。
さいわい関係の方々から心からの賛同を得て、多年苦心の結果、ようやく結実した。
一万余件にものぼる国宝、重要文化財の鑑賞に、これで十分であると断言はできないが、限られた条件のもとで最善を尽くし、それなりの成果をあげ得たと、ひそかに自負している。
なお文化財所有の方々から多大のご協力をいただき、また監修の文化庁では、担当官が総力をあげ、図録の分類配列にいたる細かい編集に参加していただいた。その他関係者のご協力に改めて感謝する。
この図録が専門家、美術愛好家だけでなく、多くの文化遺産に関心を持つ人々の座右のものとなることを願っている。本図録はわれわれの文化遺産への誇りを一層新たなものにしてくれるであろう。
【目次より】
刊行のことば
凡例
原色図版
銅鏡 山口寿一
金銅聖観音像懸仏 若松寺
金銅金剛界曼荼羅 徳満寺
大壇具 室生寺
金銅五種鈴 尊永寺
銅錫杖 輪王寺
金銅錫杖 善通寺
金銅種子華鬘 兵主大社
花鳥文磬 清浄心院
金銅蝶形磬 親王院
鋳銅梅竹文透釣燈籠 観音堂
芦屋霰地楓鹿図真形釜 細見 実
概説 金工品について 鈴木友也
図版 金工
鏡像・懸仏・その他
舎利塔・舎利容器
仏具
1 密教法具
2 供養・荘厳具 濯仏盤、壺、鋺、鉢、瓶、柄香炉、華籠、三具足、天蓋光心、幡、垂飾、華鬘、経箱、戒体箱、説相箱
3 梵音器
i 磬、銅鑼、鉦鼓、鰐口、金鼓、雲版、錫杖
ⅱ 鐘(日本・朝鮮・中国・西洋) 燈籠(金属造・石造) 鏡 茶湯釜
雑 墨床、水注、匙、托子、皿、炉、湯船、鑰、釵子
鉾、斧、鎌、鋸、祠、厨子、鳳凰
索引 金工
【凡例より】
材質(技法)、用途(品種)によって四巻に分け、国宝・重要文化財指定(昭和五十一年六月現在)の工芸品を収録する。
本書は金工編であるが、石造の燈籠のほか木造でも本巻の同品種のところに収めたものもある(懸仏、多宝塔、華鬘など)。また、一点で二種以上の材質からなるものについては、その美術的見地から重要度が金工にあると認められるもの(成体箱、説相箱など)、及び材質・品種の異なるもの二点以上が一紙として指定されている場合、その主となるものが金工品であるもの(鏡及び鏡箱など)は、いずれもともに本巻に収めた。
御正休は形態上から鏡面に毛彫を施したものは鏡像に収め、圧出と高肉彫の像を有するものは懸仏として扱った。
一件で多数の点数に上る場合、同工のもので一部割愛したものもある。
各品種の中での配列は時代順とし、同時代のものは原則として古いものから順にしたが、特に懸仏は尊称別、磬・鏡・茶湯釜は文様・形式別を併用した。外国作品は同品種の日本作品の後に置いた。
各図版の説明は略名称、員数、所在都府県、所蔵者、材質、技法、文様、法量、時代順を基本とした。なお、銘文の年紀、作者等を注記し、日本年号のあとに西暦を付記した。また、一件で員数が複数の場合、便宜上①②……の内訳番号を付けた。
指定名称は第27巻の別冊「工芸品総目録」において記載する。
図版及び索引の◎印は国宝を示す。
【原色図版 解説文より一部紹介】
2 金銅聖観音像懸仏 一面
山形県天童市大字山元 若松寺
鏡板径七五・〇cm 像高四六・〇cm 鎌倉時代
鋳銅鍍金、大形の懸仏である。鏡板は鋳成で、周囲に鍍金の覆輪を繞らし、縁回りはさらに鍍金の板金を重ねて、上に三点、二点ずつの菱鋲を打っている。聖観音像は鋳銅鍍金、半肉彫であるが、立体彫に近く背面をわずかに削る。両肩蟻衲止め、宝髻は高く毛彫を加え、宝冠台を繞らし、正面白毫は鋲打ち、左手屈腎し手首に板金の腕釧を付け、手に蓮華茎を持つ。右手も屈腎し、掌を前方に向けて印相を結び、木地に金銅板製蓮弁を葺いた台座上に結跏趺坐している。光背は金銅の頭光・身光を鋲打止めしている。鏡板の両肩に蓮華唐草文毛彫入の花先形鐶座に菊座・小刻とも三重を重ねて切子鐶台を打っている。鏡板の襲面中央に十二行の左の銘文が刻まれている。
(釈文)
すなわち弘長三年(1263)に奉献されたものである。平安時代にあらわれた鏡面に毛彫した御正体から半肉彫、高肉彫と発展し最頂点に達したのが鎌倉時代後期で、岐阜・新宮神社の虚空蔵菩薩像懸仏(第四五図)とともにその代表的作例である。この懸仏は当寺の外陣の正面に懸けられ拝されている。すなわち秘仏の本尊に対しお前立的性格をもっている。これは近くの立石寺根本中堂の寛喜三年(1231)銘懸仏、奈良・霊山寺貞治五年(1366)銘懸仏(第三八図)も同様で、懸仏の発展過程を物語っている。(鈴木友也)
5 金銅五種鈴(三鈷鈴欠)一具
静岡県袋井市豊沢 尊永寺
独鈷鈴高二六・一㎝ 五鈷鈴高二五・六㎝ 鎌倉時代
宝珠鈴高二五・八㎝ 塔鈴高二七・九cm 鎌倉時代
五種鈴は密教修法のときに用いる道具で、鈴身の上部に独鈷・三鈷・五鈷・宝珠・塔婆などを据えた鈴で、これを金剛鈴とも呼んでいる。
これらはいずれも鋳銅鍍金であり、独鈷鈴は舌をのぞいて一鋳で、鈷の鋒は細く鋭く、把は太く中央八方に大きな楕円形縦長の鬼目を回らし、蓮は二重に彫って蕊に魚々子を打ち、上下の蓮華は珠文帯で約し、その下方の蓮弁はゆるやかに開いて鈴身上部に接して力強い。鈴身は裾が張らず、口径に比べて丈高く簡素な形態を示している。
五鈷鈴は把及び鈴身は前者と同様であるが、鈷は張りが強く、鋒鋭く極めて剛壮につくられている。
宝珠鈴は火焔と舌を除いて一鋳とし、鈴身と把部は同前であるが、把部頂上に宝珠五個を据え、さらに透彫の火焔を装着している。
塔鈴は宝瓶形塔を鈴身とは別に鋳て鈴身の上に据え付けたもので、塔の形は宝塔・宝蓋・請花・相輪・宝珠の各部からなっている。これは三鈷鈴を欠いてはいるか、その形姿は簡潔雄大で、鎌倉時代の特色が顕著である。金剛鈴の遺品中、類例が少なく、極めて優れた作風を示した密教法具中異彩を放つ一群である。(広井雄一)
【索引より 一部紹介】
◎印は国宝。(ここでは省いていますが、本には記載されています)
石磴龍 石清水八幡宮(京都)
石磴籠 栄山寺(奈良)
石磴籠 延寿院(三重)
石燈龍 大宮売神社(京都)
石磴籠 鏡神社(滋賀)
石磴籠 春日神社(大阪)
石磴籠 春日大社(奈良)
石磴籠 春日大社(奈良)
石磴籠 河桁御河辺神社(滋賀)
石磴籠 北村ひろ(京都)
石磴籠 北村ひろ(京都)
石磴籠 日部神社(大阪)
石燈籠 西教寺(滋賀)
石燈籠 三大神社(滋賀)
石磴籠 常楽寺(滋賀)
石磴籠 浄瑠璃寺(奈良)
石磴寵 関蝉丸神社(滋賀)
石磴籠 醍醐寺(京都)
石磴籠 当麻寺(奈良)
石磴籠 高木神社(滋賀)
石磴罷 橘寺(奈良)
石燈籠 建部神社(滋賀)
石磴籠 談山神社(奈良)
石燈籠 東大寺(奈良)
石磴籠 丹生川上神社(奈良)
石磴籠 白山神社(岐阜)
石磴籠 筥崎宮(福岡)
石燈籠 八幡神社(京都)
石磴寵 東大谷日女神社(奈良)
石磴籠 法隆寺(奈良)
製版 瑞巌寺(宮城)
製版 長光寺(埼玉)
製版 妙本寺(神奈川)
柄香炉 久保惣太郎(大阪)
柄香炉 金剛寺(大阪)
柄香炉 東京国立博物館
柄香炉 藤田美術館(大阪)
柄香炉 竜光院(和歌山)
斧 奈良国立博物館
斧 白山神社(岐阜)
斧 輪王寺(栃木)
戒体箱 金剛寺(大阪)
戒体箱 醍醐寺(京都)
鏡及び鏡箱 熱田神宮(愛知)
鏡(松藤双鶴文) 伊那下神社(静岡)
鏡(禽獣葡萄文) 大山祇神社(愛媛)
鏡(藤花松喰鶴文) 春日大社(奈良)
鏡(竹虎双雀文) 春日大社(奈良)
鏡(禽獣葡萄文) 春日大社(奈良)
鏡(双竜文) 香取神宮(千葉)
鏡(海獣葡萄文) 香取神宮(千葉)
鏡(梅花檜垣群雀文)久保惣太郎(大阪)
鏡(牡丹蝶鳥文) 久保惣太郎(大阪)
鏡(菊花双鶴文) 久保惣太郎(大阪)
鏡(蓬莱山文) 久保惣太郎(大阪)
鏡(松喰鶴文)ほか 熊野那智神社(宮城)
鏡(唐花鴛鴦文) 耕三寺(広島)
鏡(花鳥文) 金剛寺(大阪)
鏡(双鳳文) 金剛証寺(三重)
鏡(唐草鴛鴦文) 山宮神社(鹿児島)
鏡(花鳥文) 四天王寺(大阪)
鏡(獅子牡丹蜂鳥文)浄信寺(滋賀)
鏡(梅樹双雀文) 玉前神社(千葉)
鏡(松喰鶴文) 田万明子(大阪)
鏡(荻薄扇面双雀文)田万明子(大阪)
鏡(籬菊双雀文) 都万神社(鹿児島)
鏡(瑞花双鸞文) 東京芸術大学
鏡(双鳳天馬文) 東京芸術大学
鏡(瑞花双鳳文) 東京国立博物館
鏡(海磯文) 東京国立博物館
鏡(禽獣葡萄文) 東京国立博物館
鏡(蟠竜文) 東京国立博物館
鏡(伯牙弾琴文) 東京国立博物館
鏡(笹散双雀文)及び鏡箱 道明寺天満宮(大阪)
鏡(梅樹双雀文) 長浜成夫(三重)
鏡(秋草蝶鳥文) 新田神社(鹿児島)
鏡(柏樹鷹狩文) 新田神社(鹿児島)
鏡(花鳥文) 新田神社(鹿児島)
鏡(梅雀文 竹虎文)貫前神社(群馬)
鏡(月宮文) 貫前神社(群馬)
鏡(秋草双雀文) 八幡神社(鹿児島)
鏡(菊花双雀文) 細見亮市(大阪)
鏡(松竹双雀葦手文)細見亮市(大阪)
鏡(松藤双鶴文) 細見亮市(大阪)
鏡(桐竹鳳凰文) 細見亮市(大阪)
鐘(梅樹維雀文) 本能寺(京都)
鐘(秋草松吮鶴文) 松永憲二(大阪)
鏡(松吮鶴文) 山口寿一(和歌山)
鏡(菊花双雀文) 輪王寺(栃木)
鏡(瑞花孔雀文) 輪王寺(栃木)
鑰 東大寺(奈良)
懸仏(山王本地仏)上田堪一郎(京都)
懸仏(釈迦如来) 円乗院(岩手)
懸仏(釈迦如来)ほか 観福寺(千葉)
懸仏(十一面観音等)岩殿寺(長野)
懸仏(聖観音) 窪田久保(静岡)
懸仏(十一面観音)ほか 熊野那智神社(宮城)
懸仏(千手観音) 地蔵院(岩手)
懸仏(聖観音) 若松寺(山形)
懸仏(十一面観音) 昌林寺(山形)
懸仏(高爪大明神)ほか 高爪神社(石川)
懸仏(馬頭観音) 東観音寺(愛知)
懸仏(聖観音) 東京国立博物館
懸仏(金剛界大日如来)ほか 仁科神明宮(長野)
懸仏(十一面観音) 長谷寺(神奈川)
懸仏(鑁字) 鑁阿寺(栃木)
懸仏(観音)ほか 法王寺(島根)
懸仏(千体阿弥陀) 細見 実(大阪)
懸仏(熊野十二社権現)細見 実(大阪)
懸仏(熊野十二社権現)細見亮市(大阪)
懸仏(虚空蔵菩薩) 細見亮市(大阪)
懸仏(薬師三尊) 霊山寺(奈良)
火舎 法隆寺(奈良)
火舎 輪王寺(栃木)
羯磨 教王護国寺(京都)
鐘 英賀神社(兵庫)
鐘 石手寺(愛媛)
鐘 石山寺(滋賀)
鐘 厳原町(長崎)
鐘 井上ふみ(東京)
鐘 栄山寺(奈良)
鐘 永平寺(福井)
鐘 円覚寺(神奈川)
鐘 延光寺(高知)
鐘 大御堂寺(愛知)
鐘 大峯山寺(奈良)
鐘 園城寺(滋賀)
鐘 戒長寺(奈良)
鐘 鰐淵寺(島根)
鐘 笠置寺(京都)
鐘 月山神社 出羽神社 湯殿神社(山形)
鐘 菅山寺(滋賀)
鐘 観世音寺(福岡)
鐘 喜多院(埼玉)
鐘 金峯山寺(奈良)
鐘 建長寺(神奈川)
鐘 健福寺(佐賀)
鐘 小網寺(千葉)
鐘 興福寺(奈良)
鐘 広隆寺(京都)
鐘 興隆寺(愛媛)
鐘 興隆寺(山口)
鐘 国分寺(愛知)
鐘 国分寺(香川)
鐘 国分寺(神奈川)
鐘 国分寺(高知)
鐘 五尊教会(栃木)
鐘 金剛三味院(和歌山)
鐘 金剛峯寺(和歌山)
鐘 金剛峯寺(和歌山)
鐘 西教寺(滋賀)
鐘 西光寺(福岡)
鐘 慈光寺(埼玉)
鐘 勝善寺(愛知)
鐘 聖天院(埼玉)
鐘 正念寺(高知)
鐘 称名寺(神奈川)
鐘 勝林院(京都)
鐘 浄橋寺(兵庫)
鐘 常楽寺(神奈川)
鐘 真禅院(岐阜)
鐘 新薬師寺(奈良)
鐘 神宮寺(新潟)
鐘 神護寺(京都)
鐘 深大寺(東京)
鐘 諏訪神社(長野)
鐘 千光寺(兵庫)
鐘 泉福寺(和歌山)
鐘 善徳寺(滋賀)
鐘 当麻寺(奈良)
鐘 大雲寺(京都)
鐘 多久頭魂神社(長崎)
鐘 玉置神社(奈良)
鐘 長勝寺(青森)
鐘 長勝寺(茨城)
鐘 長勝寺(香川)
鐘 長宝寺(大阪)
鐘 劔神社(福井)
鐘 等覚寺(茨城)
鐘 唐招提寺(奈良)
鐘 東漸寺(神奈川)
鐘 東大寺(奈良)
鐘 東福寺(京都)
鐘 徳勝寺(岐阜)
鐘 徳照寺(兵庫)
鐘 長谷寺(神奈川)
鐘 般若寺(茨城)
鐘 日吉神社(滋賀)
鐘 平等院(京都)
鐘 報恩寺(京都)
鐘 方広寺(京都)
鐘 宝城坊(神奈川)
鐘 防府天満宮(山口)