新書です。　きれいなほうです。


民俗学、「妖怪学」の大家が、民衆の霊魂観、神観念を解明する
日本を鎮守する「人神」に、祈りを捧げ、疫病・災厄の鎮撫を願った人びとの思い


古来、日本人は実在した人物を、死後、神として祀り上げることがあった。空海、安倍晴明、平将門、崇徳院、後醍醐天皇、徳川家康、西郷隆盛、そして名もなき庶民たち――。もちろん、誰でも神になれるわけではない。そこには、特別な「理由」が、また残された人びとが伝える「物語」が必要となる。死後の怨霊が祟るかもしれない、生前の偉業を後世に伝えたい――。11人の「神になった日本人」に託された思いを探りながら、日本人の奥底に流れる精神をつかみだすとしよう。


【目次】

まえがき――神社には何が祀られているのか

序章.人はいかにして神になるのか

◆一部.見えざる「力」を借りるために――顕彰神

1章.藤原鎌足――密談の地に鎮まる最初の人神(談山神社)

・古代日本に君臨した政治家
・「わたしは神になる」

2章.弘法大師空海――仏に選ばれた天才(高野山奥之院)

・密教の神に昇華する
・高野聖が果たした役割

3章.安倍晴明――呪術に長けた陰陽師への憧憬(晴明神社)

・陰陽師の大家は何者か
・空海信仰と晴明神話の水脈

4章.楠木正成――発見された忠臣のシンボル(湊川神社)

・後醍醐天皇に殉じた出自不明の男
・ゲリラ軍団の大将を支えた勢力とは

5章.豊臣秀吉――神になることを望んだ天下人(豊国神社)

・秀吉の不安と苦悩
・「反徳川」のシンボル

6章.徳川家康――東国から全国を照らす神(日光東照宮)

・三人の「天下人」の思惑
・「隠された」家康の墓

7章.西郷隆盛――思慕と敬愛の「記憶装置」(南洲神社)

・夜空に現れた「西郷星」
・無言の総帥の最期

◆二部.ひょっとしたら祟るかもしれない――祟り神

8章.崇徳上皇――黄金に輝く「天狗の棟梁」(白峯寺、白峯神社)

・院政内の権謀術数
・史上最強の祟り神へ

9章.後醍醐天皇――北朝を望む、南朝の遺魂(天龍寺、吉野神宮)

・源氏の幕府を夢見た足利尊氏
・天龍寺の聖なる場所

10章.佐倉惣五郎――怨霊から顕彰神となった義民(東勝寺宗吾霊堂)

・一揆の立役者を襲う悲劇
・神であり仏である義民の物語

11章.平将門――日本資本主義の中核に眠る、反権力のシンボル(将門塚、神田神社)

・東国の「新皇」
・「朝敵」と「悲劇の英雄」という二つのイメージ

終章.なぜ人びとは、死者の「たましい」を祀るのか